夢小説の記事一覧

観察-桂小太郎

「今日も寒いね~」
「あぁ」

ヅラとあたしは寒い中あたしが買い物に行きたい
と言ったので買い物に行った

「買いたいものはもう買ったのか?」
「うん♪ありがとね」

あたしは腕の中にある買い物袋をぎゅっと抱きしめ笑みを浮かべてみせた

「あっあともう一つある」
「なんだ?」

あたしはこっちきて?といい桂の腕を引っ張る

「ここ、ここ」

指をさした店ははじめて二人で来たレストラン
洋風で桂には会っていないイメージだけど
あたしが来たいって言ったら来てくれた店

「ご飯食べよっか?」

『あたしは買い物に行こう』

と言った時から決めていた
ここにきて告白をしようと….

「ここ、二人ではじめ来たの覚えてる?」
「うむ。お前が来たいって言ってきたな」

覚えてたんだ…そんなに正確に

「そうだよ。覚えてくれてたんの?」
「俺は記憶力がいい。観察力もすぐれているぞ?」

知ってる・・ずっと見てたから
そういう点ならあたしも観察力はある

「そっか。ねぇ、何食べる?」
「俺はこれだ」
「じゃ、あたしはこれで」

メニューを見て決める
料理がくるまでに告白をしよう…
食後にしたらたぶん緊張して料理がのどを通らないだろう

「ねっ・・ねぇヅラ」
「ヅラじゃない、桂だ」
「あ、あのね・・・その」

あぁ、やっぱ食後に告ろうか?
駄目だ・・・そんなこと言っていっつも
先に延ばしてきた
だから、今日こそは・・・・

「あたし、ずっと言いたかったことが・・」
「告白か?」
「!!??///」

(バレタ・・・?ナンデ・・・?)

「図星か?」
「そんなんじゃっ///」
「知ってる」
「へっ?」
「さっきも言ったはずだ。観察力もすぐれていると」
「じゃぁ、あたしのこと観察してたの?」
「まぁそういっても間違えではないな」

うそ・・なんか恥ずかしい~///

「それで、答えは?」
「ところで」

(む・・・無視ですか?)
「お前は俺のこと観察していなかったのか?」
「・・・はぁ?」

観察って言うか見てただけ・・・かな

「な、なんでそんなこと?」
「俺はお前のこと観察していた。だから俺のこと好きだって分かった」

スラッと言うな・・恥ずかしいだろう!!

「だから、なに?」
「観察するのは興味のあるものだろう?」

興味・・・?

「つまり、なに?」
「好きだ」

だからスラッと言うなって・・・って
好きーーー!!??はあーーーー!!?

「ちょちょ、す、好きって///」
「好きと言ったら好きなのだ」

恥ずかしいったら・・・周りの人も見てるしさぁ///

「返事をしろと言ったのはお前だ」
「・・・シカトしてたわけじゃないんだ」
「うむ」
「そっか。ありがとう」
「うむ」

そのあと沈黙だった
ご飯も結局のどを通すのがきつかった

「じゃ、帰ろう」

すごくつらいよう・・・両想いになったのに空気が重すぎるな
ヅラ、なんかいつも以上に無口だし

「空」

いきなり名前を呼ばれちょっとびっくりした

「何?」

桂の方を見たら何か唇にあたった

「づ、ヅラ?」
「ヅラじゃない、桂だ」

口の中を確かめたら飴玉が入っていた

「甘かったからやる」
「でもこんなとこで・・・」
「いいだろう。こんなことぐらい」

一気に沈黙がはれた

「うん。恋人だからね♪」
「うむ」

でもこれ・・・・梅味の飴だよね?
あたし梅嫌いなんだけど
観察力と記憶力・・・・あるんじゃなかったっけ?

お堅いチョコレート-高杉晋助

「晋助様ーーーー!!」
「なんだ」
「はい♪チョコッス!!!」
「・・・あぁ」

そして晋助はまた子のチョコを受け取った
あたしは見てるだけ

「また子さん、元気ですね」
「そうだな。行くぞ」
「はい」

あたしは最近執事みたいな感じで晋助さんにつきっきり
大体四六時中一緒にいる
そしてあたしは晋助さんにひかれた

(実はあたしもチョコ用意したんだけどな・・・どうしよう?)

「どうした?」
「な、何がですか?」
「ぼーっとしてるから」
「いえ、なんでも」
「そうか」

しばらくの沈黙
いつも・・・・こんな感じだし
晋助さん、きっとあたしなんか・・・
しばらく外を歩いていた
前を見ないで歩いていたから晋助さんにぶつかってしまった

「も、申し訳ありません」

あわてて頭を下げると晋助さんはポンポンとあたしの頭を撫でた

「そんな固くなんなよ。もう何日もたつのに固くなりすぎだ」

その言葉がすごくうれしかった
過激派の攘夷浪士だというから怖いのかと思いきや
優しい言葉をかけてくれた

「お優しいお言葉、ありがとうございます」
「あと、その言葉遣いも固い。やめろ」
「ですが・・・」
「やめろ」
「ではどういう言葉使いがよろしいのですか?」
「それじゃなけりゃなんでもいーさ」

そして晋助さんはまたあるき始める
なんだか距離が縮まったみたい・・・
今日の仕事は終わった
もう夕方で太陽が赤くなっていた

「お帰りになりますか?」
「あぁ」

帰ろうと歩いていたら晋助さんがチョコをくれた

「食え」
「これは・・・また子さんから貰ったものですか?」
「だからなんだ?」
「いけませんよ?ご自分でお食べになって下さい」
「甘いもん嫌いなんだよ。でも食わねぇとうるさそうだから食っとけ」

これも執事の仕事だと思い仕方なく受け取った
じゃ、あたしのもいらないか・・・
一応甘さ控えめのもの作ったんだけどさ・・

「晋助さん。おいしいですよ?お食べになりますか?」
「いらね。甘くねーなら食う」
「あの・・・じゃ、これ」

あたしは勢いに任せてチョコを差し出した

「私が作りました。晋助さんに・・・//」
「そうか」

晋助さんはあたしのチョコを食べた

「どうでしょうか?」
「あぁ・・うまい」

良かったと笑うと晋助さんが顔を近づけてきた

「え・・・?」

唇と唇が重なる・・

「うまい」
「し、晋助さん!!///」
「ククク・・・・行くぞ」
「・・・・はい」

真っ赤になってあたしは晋助さんについて行った
毎日・・毎日・・

陽だまり-沖田総悟

「ん・・・・・」

眩しい日差しで目が覚める
そして目を開けるとそこに総悟がいた

「そうだった・・・。総悟泊まってたんだ」
それは昨日の夜
チャイムがなり外へ出てみると総悟がいた
「どうしたの!?」
「いや、ちょっくら顔でも見ようかと」
「そう。・・・入る?お茶出すよ?」
「あぁ」
そして結局二人で明け方までお酒を飲みまくり総悟は泊まった
寝たのは4時近かった気がする・・。
「えっと・・・・今は12時過ぎ・・・かぁ~」
お腹も減ったし、なんか作るか
たぶんこいつも起きたら「メシ」って言うだろうし
「ん~。何がいいかな」
食器棚の下の棚を開けると缶詰が少しあった
(お、ミートソースがある。パスタでいっか)
そう思い、パスタを茹でる準備を進める
「ん~・・ん・・・・・空?」
「あ、起きた?昼ご飯パスタでいい?」
「ん~」
頭をかきながら起き上る総悟はどこか可愛かった
「総悟今日仕事ないの?」
「あったらこんなとこいやしねぇよ。アンタは?」
「あったらこんな時間まで寝てねぇよ」
「ふ~ん」と興味がなさそうな返事を返して冷蔵庫の牛乳を取り出す
「あ、こら!直接口付けないで!コップ使ってよ!」
「んなもんいいじゃねぇかィ。それにもう遅い」
「も~」
総悟はゴクゴクと牛乳を飲みながら冷蔵庫の中身を確認する
飲み終わると元に戻し後ろから抱きついてあたしの肩に頭を乗っける
「なに~?」
「邪魔してるだけでィ」
「どっか行け」
「なんでィ。せっかく冷え切った身体温めてやってるのに」
「さっき自分で『邪魔してる』って言ってたじゃん!!?」
結局総悟は離れることなくずっと抱きついていた
パスタをテーブルに置きフォークを準備する
「ほら、出来たから食べな」
「空、背小せぇから腰痛くなっちまったぜィ」
「自業自得」
パスタを食べ終わり食器を片づけ、総悟の方を見ると口の周りが赤い
「総悟ミートソースついてるよ?はいナフキン」
「ん」
受け取ったにも関わらずナフキンをテーブルに置いてテレビを見ていた
ちょっとイラッときたので総悟の顔を押さえて無理やり拭く
「いでででででで」
「はい、完了~。綺麗になったよ~」
「加減ってもんを知らんのかィ!?皮がむけるとこだったぜィ」
「んな強くしてないでしょ?」
「いってーな」
「分かったよ。ごめんごめん」
苦笑いして謝ると総悟はあたしの後ろのまわる
そしてまた抱きついて頭を肩に乗せる
「腰痛いんでしょ~?」
「ん~」
「なんか今日総悟変だよ?」
「・・・・・」
「なんかあったの?」
「・・・・別に」
「だってなんか大人しいし・・・。変」
「・・・・・・たい」
「は?」
「頭いたい」
「・・・・・・二日酔いじゃん」
昨日、確かに総悟はかな~り飲んでた
でもいつもこんな感じなのかと思い止めなかった
「はい、水」
「ん」
「今日は寝てな」
「なんでアンタは平気なんでィ?」
「さぁ?お酒強いのかな?」
「・・・・・」
納得いかなそうな顔をして水を飲んだ総悟は確かに具合が悪そうだった
「薬、買ってこようか?」
「いや、いい」
「そう?」
「その代りに・・・」と言ってあたしを布団の中に引きずり込む
「うひゃぁ!!!」
「大声出んじゃねェ。頭に響くんでィ」
「いきなり引っ張るなよ・・・」
「ん・・・・」
少しぐったりした総悟は眠りについた
その総悟が可愛くて優しくキスをする
総悟の看病をしながらご飯の支度をした
たったそれだけなのに温かい気持ちになった

銀魂 短編夢小説 『あなたの隣』

今日もこんな時間。
最近、残業続きで銀ちゃんとまともに会えてない。疲れたよう・・・

会いたいよ・・・銀ちゃん。

周りを見渡すと誰もいない。
そりゃそうだよね、もう11時過ぎてるもん・・・

『ここんとこ早く帰れたことないな』

そう思いながら外を見れば、3月だというのに降り始めた雪が辺りを白く染めていた
街頭に照らされた雪がたまに銀色に見えて・・・

愛しい人の髪色を思い出させる

ようやく仕事を終えた私は、疲れた身体を引きずるように会社の通用口から出たところで後から声をかけられた

「へーーい、おじょ~~~さんっ!お茶しねえ?」

それは聞き覚えのある、私の大好きな 声。

「!?銀ちゃ ん」
振り返ると、いつものバイクの横には銀ちゃん。

ふわふわの銀髪には雪が積もって、それに鼻水もでてる。

それは、今来たわけではない証。

思わず駆け寄って、銀ちゃんに抱きついた。
銀ちゃんの身体がすごく冷たい

『一体いつから待っててくれてたんだろう・・・』
今日は帰るコールだってしてないし、もしかしたらもっと遅かったかもしれないのに。

銀ちゃんは、抱きついた私の頭優しく撫でてくれた。

銀ちゃんは、優しい。
いつだって、なんだかんだ言いながら私の困ったときや会いたいとき、そばにいてくれる

銀ちゃんが優しすぎて・・・気がつくと私は泣き出していた

「っんだよ、なに泣いてんだよ、そんなに俺に会いたかったんですかーコノヤロウ」
銀ちゃんを見ると照れくさそうに横を向いていた

「会いたかったよ、コノヤロウ」

私は、銀ちゃんの冷たくなった頬に手をあてて、冷えた唇にキスを落とす

普段は、あまり私からをすることがないキスに銀ちゃんは驚いた顔をする
その顔がおかしくて、私は思わず笑ってしまった

そんな私を見た銀ちゃんは
「お前はそうやって俺のそばで笑ってりゃ、それでいい」

そう言いながらヘルメットを私の頭にかぶせてくれた。

「ほら、帰えんぞ。早く乗れよ。」
そう言って、バイクの後部をポンッ、ポンッとたたく

それは、私の指定席。

帰り道、銀ちゃんの背中に抱きつきながら耳元で
「銀ちゃん、ありがと。大好きっ」と言うと

「ああっ!?今なんか言ったか?」

そういいながらバイクを走らせる銀ちゃんの頬はちょっと赤かった。

あなたの隣なら、きっと笑っていられる。
どんなに歳を重ねても・・・

銀魂 短編夢小説 『俺の隣』(土方)

また、こんなとこで寝てやがる・・・

深夜、俺が帰るとこたつで気持ち良さそうに寝てる姿が目に入った

まあ、無理もねーな・・・こいつも疲れてたみたいだしな。

このところ、俺達はお互いの仕事が忙しすぎてろくにしゃべってもいない

今日も本当は早く帰れるはずだったが、結局急な事件で帰ってやれなかった

 『トシっ!今日は早く帰れる?今日は私、早くあがれそうなんだけど・・・』

 「行ってみなきゃわからねえが、今日なんかあんのか?」

 『そういうわけじゃないけど、なんとなーく晩御飯くらいトシと一緒に食べたいなと思って・・・』

 「まあ、努力はするが・・・期待はすんなよ。」

そう言った俺の言葉の前半だけ聞いて、お前は嬉しそうにしながら、「仕事行ってくるねっ!」と言いながら
家を飛び出していった。

そんな後姿がお前らしくて・・・

「すまなかったな・・・お前は俺と一緒でホントに 幸せなのか?」

そう寝ているお前に問いかけながら、起こさぬように 額にそっとキスをした

いつ死ぬかもしれない俺を待つ、そんなことがお前の幸せなのか・・・

そう心のどこかで思いながら、それでもお前を手放すことなどできそうにない

「う~っ、トシ~やだよう・・・別れない。」

突然の寝言に 『起こしたかっ!?』 と驚いた俺の目に飛び込んだのは頬を伝うひとすじの涙。

起こしたかと思ったが、どうやら起きてはいないらしい

「俺の知らねえとこで泣くんじゃねーよ」

そういいながら、涙を舌で舐めとるとくすぐったそうにお前は身をよじる

『頼まれても、俺の方が別れてやれそうにねーんだよ。わかってんのか・・・』

たとえ、それがお前の幸せじゃないとしても。

俺にとっては幸せなんだよ。

コタツからベッドへ運ぼうと抱きあげると、首にすがりついて 「トシ~」と何度も俺の名前を呼んでくる。

 『何の夢みてんだよ・・・』

そんなお前が愛しくて、可愛くて。

「愛してんだ・・・どうしようもねー」

普段はめったに言葉にしない。もっと言葉にできたなら、お前を安心させてやれるのかもしれない。

ベッドまで運ぶと俺も我慢できそうない。

『明日、怒るかもな・・・』そう思いながら、口付けると 「んんっ」といつもどおりのお前の唇からは甘い声が漏れる

怒ったり、泣いたり、笑ったり・・・明日のお前は、俺の隣で笑ってくれるだろうか

そんな気弱なことを考える自分に

『らしくねーな・・・。こいつと出会ってから』 とつぶやいた。

- 翌朝 -

「じゃあ、トシ行ってくるねっ!今日こそ早く帰ってきてね!」

「ああ、今日は期待してろ」

俺のその言葉に心から嬉しそうな笑顔で、お前は出て行った。

その笑顔で、俺がどれだけ救われてるか。お前は知ってるか?

「お前はずっと、俺の隣で笑ってろ!」

ベランダからお前に声をかけると、こちらに振り向きながら

「?なーにー?トシーーー聞こえなかったんだけどぉぉぉぉーーー」

と聞き返してきた

「気つけて行けっ!」

そう言ってやると満面の笑みで手を振ったお前。

お前はずっと、俺の隣で笑ってろ 俺が死ぬまで。

学生土方夢小説-二人寄り添って

二人寄り添って

部活が終わるまで教室に一人、土方を待っていた。
部室に居てもいいって言ってたけど、居られる気がしなかった。

最近の私は可笑しい…?

「待たせたな」
「うん」

土方の傍になると、そんな考えは綺麗に消えてしまう。
だけど一人になると土方が愛おしくてしょうがなくなる。
ずっと傍に居たいし、もう土方だけ居ればいいって思って―。

こんな私じゃ、土方が戸惑っちゃうよ。

「教室、寒くなかったか?」
「全然。おかげで少し勉強出来たし」

嘘なんて吐きたくないけど、
ちゃんと自分のことを見つめたいから。
こんな下手な嘘を吐いてしまう。
どうか答えが見えるまで、こんな嘘に付き合っていて。

「…悩み事、か」
「えッ…。なんで…?」

「……その笑い方」

頬を抓られて、思わず眉を顰める。

笑っていたつもりだよ、

私何も土方に言ってないはずだよ。

なのに、なんで…?

「どれだけ一緒に居ると思ってんだよ」

土方の微笑が優しすぎて、不意に涙が溢れた。

悩んでることが辛いんじゃない。

打ち明けられないのが辛いんじゃない。

土方の、その優しさが嬉しかったから。

「俺たち、まだ近づけるだろ。まだ先があんだろ」

なんで一人で抱え込んでたんだろう、
なんで一人で答えを探そうとしてたんだろう、

なんで土方と一緒になったの…?

「うッ……ッッ…ひじ、…か…たぁ…ッ」

土方の優しさが好きで、

土方の考え方が好きで、

土方の暖かさが好きで、

私を愛してくれている土方が好きだったのに。

なんで…?

「馬鹿だな、お前」
「ごめッ…泣いて……」

「もう昔の俺とは違ぇんだ、無理しなくていい」

部活後で、まだ暖かい体温の土方に抱きついた。
それもしかっり受け止めて、そっと頭を撫でてくれる。
なんて馬鹿なの私は、

こんな優しい人が、
こんなに思ってくれてる人が、

すぐ傍に居てくれていたのに―。

「優しすぎたら、甘えちゃうじゃん」

本音がポロリと出てしまう、
そんなことを私が言ったって、ただウザイとかって思われるだけなのに。
それなのに、つくづく都合の良い人だと思った。

「ッ…甘えりゃ、いいじゃねぇかよ」

赤くなった顔を逸らして、じっと横目に私を見ていた。
強く強く土方の制服を握り締めて、自分自身恥ずかしくて無言で頷いた。
何も聞かずに、
ただ顔色だけ伺ってくれる土方が、
なんだかとても大人になっていく…そう感じた。
置いていかれる前に、ちゃんと追いかけていこう…。

「甘えりゃ…いいんだよ。好きなだけ」

今度は照れもせず真剣な瞳。
衝動的に土方の唇に口付けた。
驚きもせずに、そっと頭に手を当てて返してくれる。
大人になったよね、二人とも。

「なら、好きなだけ甘えさせてもらいますッ」

「…ッ…帰るぞ」
「うん」

やっぱり照れてる。

《なんでこんなに良い人なんだろう…》

《それはお前を愛してるから…》

ありったけの想いを君に

六限目終了のチャイムが鳴った。
あとは帰りのSHRだけで終わり。そうしたら速攻部活だ。
そんなことを考えながら阿部が帰り支度をしていると、同じクラスで野球部員の水谷文貴と、マネージャーの香月衣舞がやってきた。

―――すっごくキラキラした瞳と共に。

ありったけの想いを君に

「「あーべっ!」」
「……」
「無視!? ちょっ、阿部、それは酷くない!?」
香月がそう叫ぶと、水谷は両手で目を擦り、泣き真似をしだした。
あぁ、めんどくせぇ。
ため息を一つつき、仕方なく返事をする。

「……なんだよ」

すると、二人は再び目をキラキラと輝かせた。
そして、目を見合わせて「えへへー」などと笑っている。

……なんとなく、ムカつく。

「あのね、はい、これ、阿部にプレゼントー!!」
そう言って二人が差し出してきたのは、メモ帳で折った大量の苺と箱。三つや四つならまだしも、両手の指を使っても足りないような数。
思わず眉間に皺が寄る。

「またこんなモン作ってたのか! お前ら、ちょっとは真面目に授業受けろ!」
すると、「キャー、怖ーい」などと手を取り合いながらとても楽しそうに笑っている。

イラッ

「授業中じゃありませんー」
「阿部に前も怒られたから、作るのは授業開始十五秒前までにしたんだもんねー」
香月が胸を張って右手の人差し指を立てながら説明し、水谷がそれを真似て続けた。
っていうか、別に胸を張れるようなことじゃねぇだろ。

そう、これは、今に始まったことではないのだ。
彼らは一日の授業が終わると、決まって阿部の元に苺と箱を持ってくる。
曰く、「メモゼロ運動推進中」なのだそうだ。
だが、そんなことは知ったこっちゃない。阿部にしてみればいい迷惑だ。

「いらねぇ。っつか、毎日俺のところに持ってくんなよ」
「えー、阿部以外の誰にあげるんだよー」
水谷が不満そうに言った。香月も頬を膨らませて頷いている。
「俺以外にもクラスメイトはいっぱい居るだろうが! 花井にでもあげりゃあいいだろ!」
「だって阿部が一番反応いいんだもん」
「ねー」

あぁ、ムカつく。特に、水谷。かなりうぜぇ。
そんな無駄なことをする暇があるんなら、フライを捕る練習でもしてろ! 大体、こいつらなんでこんなに仲が良いんだ!? 水谷のくせに。あぁ、苛々する。
……あれ、なんか俺、段々怒りの矛先が変わってねぇか?

俺が一人で苛々してると、水谷が頭に箱をそぉーっと載せてきた。思わず箱をグシャッと握りつぶし、軽く拳骨をお見舞いする。
「痛っ! ちょっ、阿部っ、何すんだよー!」
わざとらしい涙目で俺を睨みながら頭をさすっている。
「うるせぇ。今のはお前が悪い。いらねぇって言ってんだろ。特に、水谷。お前のはいらねぇ」
「えぇっ!? 何で!? ちょっ、それ酷くない!?」
「香月のはまだしも、お前が作ったのはすんげぇボロボロだろうが」

香月は手先が器用なのか、角がぴっちりと揃っていて、正直、上手い。
だが、水谷が作ったものは、角も揃っていないし、机の中に押し込んでいるのか、紙が皺くちゃだ。

水谷は「阿部のバカー!」と叫びながら、今日の作品を持って、花井の元へと駆けていった。
煩いのが一人減って、思わず一つ息をつく。
ふと視線を上げると、香月がさっきより一層目を輝かせて立っていた。

「香月?」
香月がもの凄い勢いで手を握ってくる。

「阿部……っ! どうしよう……っ!」
なんとなく聞きたくないが、一応聞き返してやる。
「…何が」
「あぁ、今日はお赤飯炊かなくっちゃね! だって、阿部が褒めてくれたんだもの!」
「はぁ?」
「待っててね! 明日も明後日も明々後日も、この衣舞ちゃんが阿部のために箱と苺を作ってあげるんだから!」
嬉しそうに迷惑な宣言をして、香月はスキップをしながら窓側の自分の席へと戻っていった。
俺の机の上に、大量の苺と箱を残して。
暫く呆気に取られて固まっていたが、机の上のものを香月に返すために立ちあがろうとする。しかし、先生が教室に来たためにそれはかなわなかった。
仕方なく、それらを鞄に詰める。
ある一枚を詰めようとしたとき、ふと、手が止まった。

”DEAR 阿部

大好き! すっごくすっごく大好き!

FROM 衣舞ちゃん”

赤面しそうになるのを必死で堪える。
先生の無機質な声で話される言葉なんて、正直全然耳に入ってこない。
香月をちらりと見れば、はにかんだような笑みを返してきた。

大 好 き な ん だ !  君 の こ と !

(俺が気付かずに捨ててたらどうするつもりだったんだ!)
(阿部なら必ず見つけてくれるって信じてたもん)

昨日まではごみだったものも、今日からは宝物。

信じるがままに…。

戦は何時だって理不尽だ。
己の想いを無視するかのように、次々と人を巻き込んでいく。
それが、大事な人であったとしても。

それでも、戦い続けなければならない。
己の意志の下、己が信じたもののために………。

英蓮 の得物が閃光と共に振り下ろされる。
空を斬り裂く程の剣圧は…敵陣の一角を崩しながら行く先へと彼女を導いた。

私の行く先は、ひとつ…。
あの人の………傍らのみ!

彼女の心の中にある想いは。
君主への忠誠でもなく。
ましてや君主を慕う民達への慈愛でもなく。

 -夏候惇- 。
その人へ向かうものだけだった。

「…この女…っ」
敵兵が驚愕の表情を浮かべながら 英蓮 を取り囲んだ。
この戦が始まってから何度目かの乱戦で、味方は殆ど斃れ、残った者も憔悴しきっている。
加えて、多勢に無勢。
あまりにも分が悪い状況に陥っているにも関わらず、 英蓮 の顔には笑みが零れていた。
手にしている得物をぶん、と一振りし、声を高くして言い放つ。
「道を開けて。 …私の行く手を阻む者は 『死』 あるのみ」
お願い…ここを通して、と端正な顔立ちならばこそ畏怖の様相を引き立たせる修羅の形相を敵兵に向ける 英蓮 。
しかし…それに怯む事なく敵兵の一人が徐に得物を振り上げ、声を上げた。

「…道は開けぬ。 将の行く手を阻む者は 『死』 あるのみ!」

幾人もの兵が死に伏したであろうか…。
乱戦の連続でも、息一つ乱さずに居る女戦士の出で立ちに
「…何故」
そこまで戦える?と声にならぬ声を上げる敵兵。
すると。
「何故、と…?」
敵兵の呟きに 英蓮 は眉を顰めながら軽く息を吐き、一瞥をくれた。

「私は、真に自分の愛する者のために戦う。
それ以外の理由は…私には、ない。
貴方達…真に愛する者のために戦うのでなければ…」

この場から立ち去って、と得物を手に、低く構える 英蓮 。
それを見るや敵兵共がそれぞれの得物を手にじり、と距離を詰める。
刹那。
「お願い…道を開けてっっっ!!!」
敵兵の動きを合図にするかのように、 英蓮 の足が地を蹴った。
そして、瞬く間の速さでその手から眩い一閃の光が放たれる。

紅い飛沫と共に幾つかの抜け殻が地へと弧を描き、鼻を突く生々しい金属臭が辺りに漂い始める。
一呼吸も置けない彼女の剣撃に、いよいよ敵兵も鬼気迫るものを感じたか。
「………このぉっ!」
それぞれの得物を構え直し、一斉に 英蓮 へと斬り掛かった。

…それでいい。

低く構えた頭上に振り下ろされる剣の一撃を自らの得物で受け流しながら 英蓮 は思った。
私の言葉が奴等の心を刺したかは定かではないけれど…奴等は今、間違いなく『信念』の下に動いている。

ならば…。

英蓮 は改めて意を決し、唇をきゅっと引き締める。
そして、背中に迫る刃を身を翻して避けると
「…この私を、そう簡単に斃せると思うなっ!」
己の得物を頼りに、敵兵の群れへと身を投じた。
自らの手で鮮やかな紅い雨を降らせながら………。

「…忌々しい」
並み居る敵兵の群れに夏候惇は小さく舌打ちをした。

ここは夏候惇軍が守りを固めている…本陣前の中継拠点。
敵の大将は今しがた夏候惇自身が斃した。
その報は…伝令を通して、既に相手にも知れている筈だ。
それにも関わらず、弱まる事のない敵の攻勢。
何が奴等を突き動かしているのか、彼には痛い程解るが…。
ふ…と表情を変えずに軽く息を吐く。
そして、目の前に降りかかる剣撃を己の得物 『滅麒麟牙』 で弾くと
「未だ解らんか…大将は俺が斃した。 無闇に死に花を散らすな」
敵兵の一群に向けて言い放った。
すると。
副将らしき初老の男が夏候惇の目の前に躍り出た。
その男は、手にした得物の切っ先をしっかり彼に向けると声を高らかに叫ぶ。
「貴様を斃さぬまま本陣へ戻れと言うか!? …小癪なっ!」
皆怯むな!と辺りに怒号を響かせ、意気揚々と得物を振り翳す男。
直後、その一撃を真正面から受け止める夏候惇。

がきぃんっ!!!

覇道を護る者と、阻む者。
二人の 『信念』 が瞬間、ぶつかり合った。
「うぬぅぅぅ…」
「…くっ」
互いの得物が小刻みに震えながらぎりぎり、と唸りを上げる。
…流石は百戦錬磨、といったところか。
鍔迫り合いは周りが固唾を呑む程で、力は完全に拮抗していると言えた。
しかし。
それは長くは続かなかった………。

これを好機と読んだか、敵兵の一人が得物を順手に構え、突如夏候惇の背後へと足を駆った。
だが、己の身に危機が迫っているにも関わらず、夏候惇は得物への力を緩めようとしない。
斬られるのも、辞さないというのか…。
周りの思いを余所に…敵兵の刃がまさに今、振り下ろされようとしていた…。

刹那。
夏候惇が力を更に加え、副将の刃を勢いよく弾いたと同時に。
背後から己に向かうものと違う剣圧を感じた。
「ぐ…っ」
夏候惇の力に圧される形で地に膝を付く副将と、間を置かずに足元へと崩折れる敵兵の身体。
そして。

「…男と男の勝負に水を差すなんて…。 野暮な輩も居たもんね」

夏候惇の背中に、心底呆れたような言葉が響いた。
『滅麒麟牙』 を構え直し、声の方向をちらりと視線を移す。
すると。
そこには…多少息を切らしてはいるが、残る敵兵共に不敵な笑みを向ける 英蓮 の姿があった。
夏候惇はその姿に顔を向ける事なく微かに笑みを零すと、その姿を己が視界の端に捉えながら声を発す。
「何… 英蓮 。 その者はお前の心境と同じだったのだろう」
「『信念』 ね。 それなら解るわ…私だって」

…元譲、貴方を失いたくないもの。

夏候惇の背中に自身のそれを合わせた 英蓮 が言葉を返した。
そして、得物にこびり付いた血糊を一閃で振るい落とし、再び順手に構えると
「…やっと貴方と一緒に戦えるわ」
この場に不似合いな柔らかい微笑みを夏候惇に与える。
しかし、当の夏候惇は視線を先程弾き飛ばした副将に戻し、素っ気無い言葉で返す。
「ふん。 遅かったな…お前の分まで殺ってしまおうかと思っていたぞ」
「遅くて悪かったわね! 折角人が援軍として駆けつけたのに…その言い方って酷くない!?」
全くぅ…と己の頬を膨らませて抗議する 英蓮 だったが…直後、表情を元の笑顔に戻した。
これが…彼らしい、と言うべき感謝の言葉。
英蓮 しか知り得ない、本心。
この状況でも全く変わらない夏候惇の態度に、 英蓮 はほっと安堵の息を吐く。
直後、得物を力任せに差し向ける敵兵を一瞥し、その剣を自身の得物で払い落としながら
「…まぁ、貴方が無事でよかったわ。 これで少しは手が抜ける筈よ」
ふふん、と軽く鼻を鳴らすと、間髪入れずに敵兵の肩口へ己の一撃を叩き込んだ。
それを横目で見ながら夏候惇がふ、と小さく微笑う。

…心憎い事を。

夏候惇は知っていた。
副将と対峙した時辺りから、 英蓮 が近くに居た事を。
彼の戦人たる所以を傍から見、そしていよいよ危なくなったら手を貸そう…とでも思っていたのだろう。
実に 英蓮 らしい『心遣い』である。
だが、それが解っていたからこそ副将に集中する事が出来た。

頼もしい、俺の………

「… 英蓮 。 ここはとりあえず礼を言っておく」
再び順手に握った刃に力を込めながら斬りかかる副将を難なく『滅麒麟牙』で斬り払い、夏候惇は云った。
そして、吹き上がる血潮と共に勢いよく倒れる副将の身体に止めの一撃を与えると。
ここでようやく 英蓮 の姿をしかと見据えた。
刹那。
英蓮 がその視線に気付き、同じように夏候惇を見やる。
戦の最中…信じる者の視線が己のものと重なった。

敵兵の群れを目の前に、息を切らしながらも得物を片手に凛と構える 英蓮 の身を案じてか。
夏候惇が 英蓮 に再び背中を預けながら声をかける。
「だが…一つ言っておく…無理はするなよ」
「それはお互い様よ、元譲。 私は何があっても…貴方を護りたいの」
「…その台詞、そっくりそのままお前に返そう。 …その想いも、お互い様だ」
「…そうね。 言うだけ無駄だったわ」
ふ、と微かに笑みを零すと、お互いに一瞬だけ見つめ合う。
そして。
再び視線を敵兵共に戻すと、その行く先へと殆ど同時に身を躍らせた。
紅い雨を、自らの手で降らせる事も辞さないというように………。

太陽って、眩しいよね

「いらっしゃいませー!!」

 山の上で密かに団子屋を営んでいる女の子が、今日も明るく登山で疲れてくるお客様をお出迎え。

 山ならではの美しい景色と、色鮮やかなお団子と美味しいお茶を食べて、お客様は満足して山を越えていく。

 そんな団子屋を営む女の子の名前は、ネロ。

 

 彼女は今日も、天真爛漫な笑顔でお客様を丁重にお迎えする。

 

 

 

 

太陽って、眩しいよね

 

 

 

「あっちー!!お茶お茶・・・・って、もう茶葉がないじゃない!買いに行かないと!!」

 私は、お金を懐に大切にしまい、行く準備をした。ついでに着物とか色々と買ってしまおうと思いながら。

 

 そして、山を少し降りていくと何やら沢山の声と足音が聞こえた。

 おかしい。今はまだ日も昇っていない。むしろ夜に近い時間に人がいるなんて・・・・怪しいわね、少し様子を見た方がいいかな?でも、怖いし・・・・・・・・・。

 考えた結果、好奇心が打ち勝ったネロは様子を木陰から覗くことに。覗いてみると、兵士の姿がちらほらといる。しかも、その中で真ん中にいる人は、高価な衣服を身に纏っていた。

 

(あれ?でも、あの人・・・縄で縛られてる。捕まってるのかな。)

 

 そして、暫く様子を見ているが誰も動く気配はない。しかし、皆自分の持ち物をごそごそと漁っては項垂れている。

 そして、ネロの近くからガサガサと木々がざわめく音が聞こえ、ネロはなるべく身体を縮こめて、葉や木で自分を隠した。

 すると、五人ほどの兵士達が息を切らせて戻ってきた。

 

「どうだった。」

「いや、どこもなかった。」

「そうか・・・・どうしたものか・・・せめて、罪人の最後の我侭ぐらい叶えてやりたいものだが。」

 どうやら、何かを罪人が兵士に頼んだようだ。にしても皆あまりにも必死だ。ちょっと、何頼んだか気になるなぁ~。

 そう思い、もう少し近寄ってみる。どうやら皆必死すぎて、少しぐらいの物音じゃ気付かないみたいだ。こっちにとっては好都合!

「おい!!もう一度、全員飲み物がないかどうか探してくれ!!!本当にないか~!!?!?!」

 あぁ、飲み物が飲みたいって言ったのか・・・それにしても、あの高価な服着てる人、見たことある気がするんだけど、誰だったっけな~?

「いや、何も飲み物はねぇな。」

「俺も。」

「俺もだ。」

 皆、次々にないという意思表示のために、手をプラプラと振る。そんな中、まだ一人だけごそごそと自分の服の裾の中を漁り続ける男がいた。

「おい、お前は何かありそうか?」

「ちょっと待てよ・・・・・お、おい!!飲み物じゃねぇが、干柿ならあるぜ!!おい、石田三成さんよぉ!コレで勘弁してくれや!」

 一人の男が干柿をもって、高価な服を着た罪人に手渡そうとした。

 ん??石田、三成・・・・・・・?って、もしかしてあのかの有名な豊臣秀吉に仕えていたっていう、石田三成様ですか!?!!

 聞き間違えた?いや、しかし納得が行かないこともない。確か、お客が最近石田三成が関ヶ原の戦いで敗れた後に捕まったって言ってたはずだし・・・・にしても、静かにしてるなぁ~。あれかな?クールでも目指してんのかな??

「おい、これで水分の足しにしといてくれや。悪ぃな。」

「いらん。」

「なっ・・・・てめぇなぁ!!!!!!!」

「おい待て・・・・・・何故、いらんのだ?」

「干柿は喉に毒だと聞いたことがある。俺は毒のあるものは口にはいない。お茶が飲みたいと言ったのだ。」

「「「「「・・・・・・・・・・っぶははははははははっ!!!!!!!!」」」」」

 石田三成以外の全員が、笑った。

「おいおい、もうすぐ死刑になるって奴が何を毒なんて気にする必要があるんだ!?それに、干柿ぐらいじゃ、死なねぇしよ!!」

 そう言った兵士も私も、石田三成の次の言葉を待った。もうすぐ死んでしまうのに、それでも毒を気にするなんて、変な話だ。

 次に何を話すのか、気になって耳を傾けていた。

 すると、一瞬。一瞬だけだけど、石田三成は目を開けてこちらの方を見たのだ。それまでは瞑っていた目が開いて、視線はぴったり私と合った。

 気付いているのかな・・・・兵士達は気付いていない中でも、もしかしたら彼は気付いている?元々は優れた才を持っていたのだから、それは当たり前かも知れない。しかし、彼はすぐに私から目線を外した。そして、こう言った。

 

『大儀を思ふ者は、たとえ首をはねられる時迄も命を大切にして何卒、本意を達せんと思ふ。』

 

 この言葉を聞いた誰もが、三成の言葉を聞いて固まってしまった。

「かっこいい・・・・・・。」

 まだ、この期に及んでも生きる希望を捨てていないというの?!なんて勇ましいんだろう。

 この場にいた誰もがそう思っただろう。そう思っていると、一人の兵士が草から尻を上げて、声を少し震わしながらも呟いた。

「さぁ、そろそろ行こう。今日中には六条に行かないといけねぇしな・・・・・・・・。」

「あ、あぁ・・・。」

 皆、石田三成と言う男を認めた。強い人なんだ、本当に。

 彼を立たせて、出発の準備を整える兵士達。

 

 私はというと、気付けば木陰から飛び出していた。

 兵士達はまだ私の存在に気付いていなくて、コッソリと彼の傍により、後ろ手に結ばれている縄と、足についている縄を解いた。そして、私は彼の手を引こうとしたときだった。

 一発の銃声が私の耳に激しく振動した。当たってはいないようだ。どこも痛くない。目の前の木を見ると、穴が開いていた。

「そこを動くな。」

 耳元で彼にそういわれて、私は頷くしか出来なかった。彼は、私が握っていた手をそっと放し兵士達のいる元へと戻っていく。

「全員、銃を構えろ!!多少の怪我なら構わん!ひっ捕らえよ!!!!」

 兵士達の言葉が終る時、石田三成は兵士達の倒れた中に一人立っていた。

 早い。全然見えなかった。気付けば、彼は返り血を浴びていて兵士達は死んでいて・・・・。

「フンッ、貴様らに俺が殺せるわけなどないだろう?」

 そういう彼は、ニヤリとした笑いを死んでしまった兵士達に向けていた。返り血を少し浴びている分、怖さは倍増だ。

 あぁ、恐ろしや。私も、このまま殺されるとか・・・ないよね?

「・・・・あっ!」

 私は、彼に近付き自分の着物の裾で彼の顔に付いた返り血をふき取った。すっごい嫌そうな顔されたけど。

「縄を解いたこと、感謝しよう。」

「素直にありがとうぐらい言ってくださいよ。」

「貴様、俺を誰だか知っ「石田三成さん、でしょ?」」

「・・・・・・知っててか。態度のでかい女だ。」

「ありがとうございます。」

「褒めたつもりはないが。」

「褒められたつもりもありません。それより、石田三成さんこれからどうするんですか?」

「・・・・・とりあえずは、生きる。」

「(意外と馬鹿だ。さっきは感心してたのに・・・。)じゃあ、私の団子屋でよければ、暫くの間ぐらいならかくまって上げられますよ?私の団子屋、山の上にあるし普段はあんまりお客さんも来ないですし。」

「そこまで言うなら行ってやろう。」

「いや、別に来なくてもこっちは全然構わないんですけど。」

「どっちなんだ貴様!!俺を馬鹿にしてるのか!?!!!!」

「いや、全然そんな気はないですけど。あまりにも素直じゃないのでつい・・・。」

「・・・・・・・。」

「・・・・・・・・・・とりあえず、団子屋に一旦戻りましょうか。喉、乾いているんでしょう?」

「あぁ。」

「あ・・・・・・・。」

「何だ。」

「いや、茶葉がもうないの忘れてました。だから買うために私ここまで降りてきてて・・・。」

「茶葉のことなら心配いらん。」

 そういって、石田三成さんは懐から嬉しそうに茶葉を取り出した。

 

 何か、なんていうか・・・想像してた石田三成さんとは大分かけ離れてる部分があるんですが。ま、面白い人だし別にいいんだけど。

「行くぞ、どっちだ。」

「こっちです。では、歓迎しますよ?石田三成さん♪」

 私は、石田三成さんの手を掴み、ゆっくりと山を登っていった。

 えらい捨て猫を拾ってしまったなぁ、と思いながら。

「おい、いちいちフルネームで呼ぶな。長い。」

「自分の名前じゃないですか!?」

「うるさい!」

「・・・・じゃあ、三成さんで。私はネロです。」

「ではネロ、さっさと団子屋に連れて行け。俺は腹も減った。何より喉が渇いた。」

「我侭ですよ!庶民とは思えませんね!!」

「俺は庶民ではない!!!!!!」

「これからの庶民。」

「・・・・・・・。」

 繋いだ手をブンブンと降れば、やめろ。と不機嫌そうに呟く三成さん。

 私は団子屋のあるほうを見ると、もう太陽が昇ってきていて、とても眩しかった。

 まるで、私がこれから三成さんと過ごす日々を祝福しているように思えて、私は眩しい太陽に向かって微笑んだ。

隠姓埋名

「お前に、名を与える。」

 深く、シュライネは頭を下げた。山の中、森の奥、そこに傀カイの里があった。『傀』とは、上杉家に仕える忍びの姓だ。上杉謙信その父、長尾為景の頃から仕えている。主な役割としては、敵方の情勢調査、戦準備、敵方へ進入し策を仕掛けるなど様々だ。

 そんな、忍びである傀家にシュライネは養子として迎えられた。傀家が望んだことではない。シュライネが直接傀家に頼み込んだのだ。忍びは外の人間の血を入れることを嫌っていたが、謙信の口ぞえもあり、シュライネは無事傀家に入れることとなったのだ。

「儡ライ。シュライネの名を捨て、お前はこれから傀儡と名乗れ。」

「御意。」

 シュライネはもう一度、深く頭を下げた。目の前には傀家当主。周りに並んでいるのは、傀家の幹部である忍びたちだ。シュライネを傀家に迎え入れることを、良くは思っていない。だが、傀家の主である謙信からの口ぞえならば、それを無下に断ることは出来ない。言いようのない重苦しい空気がシュライネに圧し掛かる。

 それでも、シュライネは傀家に入りたかった。ただ、忍びになりたかったわけじゃない。傀家でなければならなかったのだ。

 親に捨てられ、寺に置き去りにされ、教養も何の才も持たず、女である自分に、何が出来るだろう。

 シュライネはずっとそう考えていた。寺で過ごしていた大半は、謙信とずっと一緒にいた。文学を学び、仏の御心を教わり、兵法を知った。それだけではない。一人になったシュライネの傍に、謙信はずっといてくれたのだ。たくさんのものをもらった。形があるもの、ないものをたくさん。

 だから、返したかった。自分の気持ちを返したかった。感謝してもしきれない。自分も謙信の役に立ちたかった。そして、傍にいたかった。それが叶うのは、傀家の忍びになることだと、それしか浮かばなかった。

 決断してからすぐ、シュライネは謙信へと忍びになること、傀家に入りたいということを告げた。謙信はただ黙ってシュライネの後押しをしてくれた。

 これからは、私があなたのために戦う。あなたの役に立っていく。そう誓った。

 どれだけ重い空気が圧し掛かろうと、どれだけ冷たい目で見られようと、どれだけ身体がぼろぼろになっても、シュライネは進んでいく。それが、シュライネの生きる目的だからだ。

「主へお前のことを報告する。着いて参れ。」

「御意。」

 当主が立つ。それに倣い各幹部たちも立ち上がり、シュライネも立ち上がった。

 

 

  春日山城は、傀の里のすぐ前方にそびえていた。森の中を一直線に走って、30分。それ程の距離だ。だが、シュライネはまだ忍びの端くれ。険しい木々を飛び越えて走るなど、無理な話だ。当主と共に森を出、村人が通る道を使った。その場合、1時間以上はかかる。だが、シュライネと当主は黙って走り続けた。

「主、」

「吾坊アボウか。入れ。」

 襖の外から傀家の党首である吾坊が、謙信へと声をかける。すぐに返事は返ってきた。吾坊が音をたてずに襖を開ける。

「この度、傀家に養子となった傀儡を連れて参りし候。」

「ほう、もう名を与えられたか。」

 書簡をしたためていたのか、筆を置いて、謙信はゆっくりと振り返った。シュライネもゆっくりと顔を上げる。視線が交わる。謙信の口元が、やや上がった。

「傀家として、これから主のために・・・・・・!?」

 シュライネがそこまで言った時、謙信が急に片腕を上げ、シュライネに向かって手のひらを広げた。急なことだったのでシュライネは途中で言葉を失ってしまった。吾坊も驚きを隠せないでいる。

「吾坊、言ったはずだぞ。こいつは特別なのだ。」

「し、しかし!忍びとしてはまた未熟者ゆえ、傀家で育てなければ・・・・。」

「よい。こいつは儂の傍に置いておく。忍びとして、な。そのためにあの地をお前に譲ったのだぞ。」

 『あの地』シュライネは心の中で呟く。一体何の話をしているのか、さっぱり現状をつかめなかった。

「・・・・わかりました。儡、粗相のなきよう、傀家の恥にならぬよう心して働くのだぞ。」

「・・・御意。」

 吾坊は音もなく姿を消した。一回、瞬きをした瞬間だった。シュライネは未だに現状を飲み込めず、謙信へと視線を戻す。

「シュライネ、」

「儡です。」

「忍びの名はな。だが、お前はシュライネという名前をすでに持っておる。それ故、儂はそう呼ぶ。シュライネ。」

「・・・・なぜ。」

「何だ。」

「何故私をここへ置いてくださるのですか。私は、捨てられた人間なのです。それなのに、今までもたくさん景虎(謙信の昔の名)様にはいろんなことを教えてもらい、たくさんのものをもらいました。」

「お前が忍びになるのは儂のためだろう。儂は義に従い、義のために戦う。お前とは共に戦いたい。そう思っている。お前なら、儂に着いて来れるだろう。」

「戦う・・・・・。」

「お前は戦う覚悟があるか。」

 謙信が問う。戦う覚悟。それには相手を殺す覚悟、殺される覚悟、いろんな不安、恐怖、責任、重圧、負の感情が付きまとう。それでも、シュライネには着いていく自信があった。

「御意。」

 謙信の前で、深く頭を下げる。

 例え、忍びとなっても、新しく名を与えられようとも、その覚悟だけは貫き通してみせる。